大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)210号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて判断する。

審決は、本願発明が、黄色発色剤を含むハロゲン化銀カラー写真感光材料を発色現像液で処理した後、直ちに漂白定着液で処理し、生成した銀化合物を水洗して除去(安定化)するものである点につき、カラー写真感光材料の処理において、発色現像液で処理した後、直ちに漂白定着液で処理することは、最も簡略した処理工程として、本願出願前に周知であるとして、「写真工業」昭和四六年三月号第二九頁ないし第三二頁(甲第六号証の一)を引用し、本願発明は、ハロゲン化銀カラー写真の処理方法として最も簡略した周知の処理工程を採用したという程度のもので、単に処理工程を限定しているにすぎないものとしている。

成立について争いのない甲第六号証の一によれば、右「写真工業」には、「カラーペーパーの処理では、最も簡略した場合には、発色現像液、漂白定着液、最終水洗、安定液などの工程となり、必要によつては中間水洗が行なわれる。」(第三〇頁左欄六行目ないし一三行目)との記載のあることが認められ、右記載は、審決が認定するごとく、発色現像液処理後直ちに(水洗を行うことなく)漂白定着液処理することが周知技術であることを述べているかのように見える。

しかし、同号証の右部分の記載は、その前の文節の「これらの主要な処理工程を支障なく行なうためには、各工程の間に前処理・後処理・水洗などの工程が必要であり、また現像された色画像のカラーバランスや耐色性を増加するための安定化処理が行なわれる。」(第二九頁右欄下から八行目ないし下から五行目)との文言を受けたものであることが明らかであり、審決が周知技術が記載されているとする前記部分は、カラー写真感光材料の処理の迅速化を目的とする場合に最小限必要とされる処理工程を単に列記したにすぎず、右甲号証は発色現像液で処理した後、直ちに漂白定着液で処理するという本願発明の技術を示しているものということはできない。

このことは、同号証中に、「従来のカラーペーパーでは、発色現像処理において吸収した処理液を除去するために酸性浴・水洗などの付加的な処理工程が必要であり、また同様に漂白定着処理ののちに行なう水洗にもかなりの時間が必要であつた。このような問題を解決するためには、根本的にペーパーベースを用いない新しいカラーペーパーが必要であり、また過渡的には、吸水性のきわめて低いペーパーベースが要求されることになる。吸水性のないベースを用いたカラーペーパーでは、上述のような理由から水洗時間を非常に短縮できることになる。また、各処理工程における処理液の搬出量も低下し、処理液の使用効率を高めることができる。」(第三〇頁左欄二四行目ないし三六行目)との記載があることからも肯認することができる。すなわち、ここでも、カラー写真感光材料の処理においては、発色現像処理後、酸性浴・水洗などの付加的処理が必要であり、吸水性のないベースを用いたカラーペーパーを用いる場合でも、水洗工程はその時間が短縮されるが、なお実施されるとされているからである。

その他カラー写真感光材料の処理において発色現像液で処理した後直ちに漂白定着液で処理することが本願出願前に周知であつたことを認めるに足る証拠はない。

そうすると、審決は右の点の判断を誤つたものであり、右誤りは、本願発明が先願発明1ないし3の各発明と実質的に同一であるとする審決の結論に影響を及ぼすものと認められるから、審決は違法であつて取消を免れない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

次の一般式

<省略>

(式中Aは活性メチレン基を有する黄色画像形成発色剤の活性メチレン基の水素原子一個を除去した残基、Zはヘテロ環を形成するのに必要な原子群で、Nに直結する原子団は―CO―、―SO2―である。ただしNに直結する前記原子団が―CO―である時、Zは前記一般式中の<省略>とともに含窒素ヘテロ環核を形成する原子が炭素原子のみで構成されることはない。)で示される黄色発色剤を含むハロゲン化銀カラー写真感光材料を、パラフエニレンジアミン系発色現像主薬を含むアルカリ性発色現像液で処理した後、直ちにハロゲン化銀溶剤と銀酸化剤を含む漂白定着液で処理し、生成した銀化合物を水洗して除去(安定化)するカラー写真感光材料の処理方法。

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